ゆったり、のんびりフリーストール牛舎
太田牧場の牛舎に入ると、風通しのよい空間の中で、牛たちが自由に行き来しているのが目に飛び込んだ。仕切られたベッドスペースで休憩している牛もいるが、仕切りのない通路を歩き、水をのんだり、えさを食べたり…、なんとも平和な光景だ。
「ちょうど松本からここ安曇野に移転したのをきっかけに、昭和61年、当時はまだめずらしかったフリーストール牛舎をとり入れました。はじめた最初の年は牛の世話もひと苦労で、さらに全国から200件もの視察が入り、対応も大変だったと父から聞いています」。
フリーストール牛舎とは、牛をつながないで飼育する牛舎のこと。牛は自由に動けるため、適度な運動にもなり、ストレスも軽減されるが、その分、人間が牛を見張っていないと、けんかしたり、他の牛に飛び乗ったり…。日中だけではなく夜中の見守りも必要になり、搾乳の時間には、牛を一頭一頭、搾乳室に連れていくという重労働まで加わった。さらに、動き回る牛の足への負担を軽減し、足場の清潔を保つため、牛舎に細かいもみがらをたくさん敷きつめ、2日に1回、新しいもみがらと総とりかえする。「それでも乳牛の健康が第一。牛がつながれないことで健康でいてくれれば、いつでもおいしい生乳が搾れるので、結果的に経営も安定するのです」。
北アルプスから降りてくる風
「安曇野は水がきれいで、自然も豊か。年間を通して気温も低いから、乳牛を育てるのに適しています。夏は暑い日もあるけれど、夕方、アルプスから風が降りてきて、ひんやり気持ちがいい」と太田さん。
そびえたつ山々、広がる田園風景やりんご畑、そして温泉もたくさんあって、観光地としての魅力もいっぱいの安曇野。すばらしい環境の中でのびのび育った乳牛からつくられる美味しい牛乳が、安曇野のさらなるイメージアップにつながることを目指して、酪農家の青年たちは日々がんばっているのだ。